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麻疹(はしか)について

[2025.08.28]

 マスクをする人が減り、暑さで換気が不十分になったことで、様々な感染症が流行しています。患者数が多い新型コロナ、百日咳、伝染性紅斑(リンゴ病)は最近ご自身が罹ったという方も少なくないかと思います。一方で感染者数が少なくても重要な感染症もあります。感染者数は少ないですが麻疹(はしか)も注意が必要です。
 日本はワクチンの普及によって、2015年に世界保健機構(WHO)から麻疹排除国に認定されています。麻疹排除国である日本では国内に存在する麻疹ウイルスによる流行はありません。では、なぜ感染者が出るかというと、海外からの持ち込みが防げないからです。
 麻疹は感染から発症までの期間が長く(10~12日)、発症の前日から他人を感染させます。特徴的な口腔粘膜の所見が出るのは発症日(発熱を始めとする感冒症状が出た日)の数日後、多くの方が麻疹かもしれないと気づく発疹が出るのは一旦解熱した後になります。そのため、感染に気付かないまま生活してしまうことが少なくありません。さらに悪いことに麻疹の感染力はすさまじく、免疫がない集団であれば1人の感染者から12~14人が感染(インフルエンザでは1~2人)しますし、空気感染が主な感染経路なので広い体育館や講堂でも感染します。罹患歴がないワクチン未接種の方が感染すると100%発症します。特異的な治療法はなく、対症療法(解熱鎮痛薬や水分補給など)しかありませんので、1000人に1人が死亡します。様々な合併症を引き起こしますが、脳炎を合併した場合の死亡率は15%で、脳炎を合併した患者さんの20~40%に重度の後遺症が残ります。麻疹自体は軽症だった人でも5~10年後に亜急性硬化性全脳炎(極めて重度の致死性の脳炎)を発症することがあります。麻疹はかつては「命定め」と言われていた恐ろしい感染症です。
 麻疹はマスクや手洗いなどの一般的な感染予防法では防げません。罹患歴がない方が予防するにはワクチン接種が必要です。罹患歴もワクチン接種歴もない方はワクチン接種をご検討ください。50代以上はご自身に記憶がなくても子供の頃に感染して罹患歴があることが多いですが、50歳未満の多くは罹患歴がありません。また、30~40代の方ではワクチン接種歴があっても注意が必要です。30~40代の方は子供の頃に受けたワクチンが1回接種だったためにワクチンの効果が既に消失している可能性が高いからです。実際、各地の感染者情報の発表でも「30代、40代」の「ワクチン接種歴あり」という患者さんを目にしたことがあるのではないでしょうか。罹患歴やワクチン接種歴が不明な場合は血液検査で抗体を測定することも可能ですので、医療機関でご相談ください。
もし、罹患歴もワクチン接種歴もない状態で麻疹患者さんと接触した場合、72時間以内であれば、麻疹ワクチンの接種で発症を予防できる可能性があります。ワクチン接種を希望される場合は事前に連絡し、必ず麻疹患者と接触したことを伝えてください。これから海外渡航の予定がある方は、罹患歴がなく2回のワクチン接種歴が明らかでない場合、免疫が不十分なことが判明した場合にもワクチン接種を検討して下さい。ただし、日本国内では麻疹ワクチンの確保量が少ないため、希望者がすぐに接種できる状況にはありません。接種可能かどうかは個別に医療機関にご相談ください。

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